オニグルミの由来がとてつもなく悲しい
はい、たかはしくんこれー!!
と言いながら、笑顔で差し出してくれる先輩。
「オニグルミ」だった。
実りの秋というぐらいだから、木の実のシーズンは秋です。
にも関わらず、春のこの時期に大量に拾ってきた。
どこに住んでるのか忘れたけど、多摩川の河川敷で拾ってきたらしい。多摩川の河川敷に住んでるのかな?(違います)
今、クルミを拾おうと思うと、地面を覆う枯葉を避けて、土に埋まりかけたクルミを探すことになるので、とても手間がかかる。
わざわざ休みの日に拾いに行って、ひとつひとつ洗ってから職場に持ってくるなんて、ありえないぐらい親切ですよね。
鬼胡桃
漢字ではこう書きます。
胡桃は漢名らしく、古くからそう呼ばれていて、由来はわからないみたいです。
その胡桃の前につく鬼は皆さんご存知の通り、あの鬼の事です。
これについては諸説あるようで、ゴツゴツとした見た目から鬼を連想させたり、大きいものを鬼と表現することから、その名がついたなどという説があります。
しかし事実とは異なります。
「事実は小説よりも奇なり」
鬼胡桃。送り仮名をつけると、鬼の胡桃。
つまり、鬼専用の胡桃です。
パンダが肉食から草食に変わったように、鬼が狩猟を辞めて農耕を始めた頃に、主食として栽培したのが胡桃でした。
何故ならその実の硬さは、人間の力では到底割ることは出来ないが、鬼の力なら簡単に割ることが出来るからでした。
鬼の平均握力は800kg。強い鬼では3トンを超えたとされています。
人間の力では割ることが難しかった筈の硬さだったが、人間はそれを補って余りある知能を持った動物です。硬いからといって諦めるのではなく、不可能を可能にする為にどうするかを考えます。そしてその答えはすぐに出ました。
道具の発達です。
これにより、人間がクルミの味を知ります。
味を知った人間は欲望を持て余し、鬼が丹精込めて育てたクルミの実を、事もあろうか奪うことに決めたのです。
一方、奪われた鬼は、収穫量が減った事に気付き、原因を突き止める為に見張りを立てました。
そしてその原因が人間である事を知ると、
「おのれ人間ッ!!許すまじッ!!」
と、金棒を手に取り、種と種が存続をかけた戦いが始まる。
これが「哭鬼の乱」である。
ある鬼は怒りで蒼褪め、我を忘れた。
ある鬼は返り血を拭う暇もなく、戦い続けた。
7年続いた戦いも、ついに人間の勝利で終焉を迎えた。
最後に囚われた鬼は、刀を首に当てられたまま、クルミの木を人間の物だと認めるように迫られる。
この時に発した鬼の言葉が天を貫いた。
「体の自由は奪えても、心の自由は何人たりも奪えんのじゃあ!!あのクルミは鬼の物じゃ!!鬼胡桃じゃああ!!」
従わないものは次々と斬られ、最後の一鬼になった鬼も「鬼胡桃」と叫んで絶命していった。
鬼が絶滅した瞬間である。
流石に人間も後味が悪く、敵ながら見事に自由を貫いた鬼に敬意を込めて、この胡桃の名前を正式に鬼胡桃とした。
この鬼胡桃こそが、鬼が実在した証拠でもある。
※フィクションです。
はい、たかはしくんこれー!!
先輩は笑顔でまたオニグルミを持ってきてくれた。